川村結里子:結びや コミュニティをつくり、コミュニティをミックスし、設計する 2024.07.25 Post Share RSS Pin it 「俺たちに返さなくていいから次の人にやってやれ」 恩送りを教わった20代 三島の祖母の家を改装して、母が「おにぎりカフェ丸平」というお店を経営していたのですが、ちょうど東京で会社を辞めた私に声がかかり、カフェ運営のために移住したのが2005年頃でした。知らない人だらけなので、飲食関係の方や三島でいろいろな活動をしている方に毎晩挨拶して回ったのですが、先輩方がみんな「次はこの人に会いに行け」「◯◯さんには会ったか? 紹介しよう」というふうに、次から次へ色んな方に引き合わせてくれて、一気に三島の輪の中に入れていただきました。どこで誰が何をしているか、どんな団体やコミュニティがあるのか。三島の輪郭が見えてくる思いでした。しかも、飲みに行くとみなさん奢ってくれる。「この恩は俺たちに返さなくてもいい。次はお前が下の世代に同じようにしてあげなさい。俺たちも、上の人々からそうやって受け取ってきたから」とみなさんおっしゃって。今、私がテーマとしている“恩送り”の考え方を教えていただいたんです。 オープンコミュニティが形成される以前の三島でコミュニティづくりに励む 祖母の家には蔵があり、そこを活用してイベントをやったりもしていましたが、コミュニティづくりやまちづくりについては、当時は商工会議所など地域の団体の中で行っていました。いろいろあり、カフェの運営から外されて東京に“強制送還”させられたんですが、せっかくできた三島のつながりや経験を失いたくなくて、三島に戻れないかと考えていました。その時、NPO「東海道・吉原宿」の理事長(当時)佐野荘一さんに1年任期の富士市の仕事をいただいて、三島に戻ったんです。だんだん、自分の方向性も見えてきた頃に、NPOで函館市の「函館バル」を視察しに行く機会がありました。「これを三島で開催したい!」そう思い、「三島バル」を開催するために株式会社結屋を立ち上げたんです。1回目は、自分でチラシを持ってお店のアイドルタイムや閉店後に参加をお願いして回りました。なにしろ初めての試みだし、当時はバル=はしご酒という認識もなくて、それなに? やってどうなるの? という反応も多かったです。だけど、おにぎりカフェ時代に飲食関係でつながっていた方たちが「なんだかわからないけど、川村さんがやるならやるよ」と言ってくださって、最終的に54店舗が参加してくださいました。バルは大盛況! どの店も行列ができるほどの活況で、来訪者は約2000人となりました。このときは、バルを起点にして人をつなぐとか場をつくるということに注力していて、回を重ねるごとに居場所事業のほうに自分の軸が向いてきた感じです。 三島LINKと100人カイギで新旧をつなげる試み 今、三島はオープンコミュニティな街として知られるようになりましたが、バルを始めた頃は、それぞれの目的で活動している市民団体やNPOがいくつかあり、団体同士の横つながりはほとんどなかったと思います。そこで、学生、社会人、なにかやってみたい人、つながれる場を求めている人、行政……どんな人でも集まれる場所をまずつくろうと思って「三島LINK」を始めました。三島で何かやりたい人がやりたいことを実現できる場所、そして地域とつながれる場所をつくろうという集まりです。毎回たくさんの人が来てくれて、ここで「こんなことやりたい!」と手を上げた人が実際に活動を始めて、活動が派生して生まれていったりもしました。だけど、こういう活動は繰り返していくうちにコミュニティのメンバーが固定化していくんですね。なので、さらに自分たちのコミュニティ外の人とつながれる場をつくろうと思い「100人カイギ」で、オープンなコミュニティのメンバーと、また全然文脈が違うタイプのコミュニティのメンバーを登壇者にして、新たなコミュニティ設計をしようと取り組みました。「100人カイギ」を聞きに来た人が「なにかやってみようかな」と思ったら、「三島LINK」に来てチャレンジを宣言する、そして応援団もできる……・そんなふうにコミュニティ参加〜実践の段階を作っていきました。 コミュニティリーダーズサミットで、人の動きをもうひとかき混ぜしたい! 2023年にコミュニティ形成の場として事務所にしていたスペースを「コワーキングスペースカフェ結びや」に改装しました。今はいろいろなグループのミーティングに使われていることが多いですが、三島を訪れた人がドロップインで利用することも可能です。また1階のキッチンスペースでは食堂イベントが開かれることもあります。天城軍鶏の堀江さんとか。いろんな人たちの交流の場になればいいなと思っています。そして2024年夏は、7月13日に開催予定の「コミュニティリーダーズサミット(CLS)三島らへん」の開催に力を入れています。これはコミュニティマーケティングの手法を使い、地域課題の解決に取り組む人(地域内)と、外部にネットワークを持つ人をつなぎ合わせ、地域の課題解決を前進させる取り組みです。今の三島で生まれているオープンなコミュニティに、日本各地で百戦錬磨の活動をしてきたコミュニティおばけ、変態的な(いい意味で言ってます・笑)パワーのある人たちが交わる場を設計することで、強烈なゆさぶりがかけられるんじゃないかと思ってるんです。また、“三島らへん”としたのも、三島だけではなくて焼津から小田原あたりまでも含んでの運営組織にしたので、ここですでに地域を越境したつながりが生まれると思っています。これから、コワーキングカフェ結びやを中心に、地域の誰もが先生であり生徒である、出入り自由の学び合いのコミュニティ「富士・箱根・伊豆 おむすび大学」の活動もはじめています。内外からの刺激を受けることで、三島のコミュニティがどう変化するか、開催が楽しみです!※記事は7月1日現在のものです。 【ひとこと】「コミュニティをつくり、コミュニティをミックスし、設計する」ことで、これからも地域内外の人がつながり混ざる、汽水域のような場を地域に作っていきたい。そうすることで、自然とこの街の暮らし方、働き方は、もっともっと面白くなっていくと思っています。“人”のつながりから、今こうして活動できていることに恩を感じながら、「恩送り」ができるよう、これからも楽しみながら活動していきたいと思います。 【あなたにとって三島はどんな場所?】もともとおばあちゃんちがある田舎で、毎年、夏休みは三嶋大祭りに行くのが楽しみな場所という感じでした。でも住んでみて、こんなに人が開放的でお世話好きだって知りましたね。次の世代には私も同じことをしていきたいです。 【三島でのお気に入りの場所・モノ・コトは?】「結びや」の裏手にある蔵は、私にとってとても大切な場所ですね。あの蔵があったからできたことがいっぱいあります。自分の原点でもある場所ですし、三島LINKや100人カイギなどを開催して、つなぎ直しができた場所でもあります。また、ここは母の実家でもあるわけで、祖母から続くこの家(丸平含め)ついでいけたという点でも、とても大事な場所です。 【サードプレイス利用者へひとこと】色んな人がいて、色んな場所があって、三島には肩肘張った自分を解き放てるような、不思議な力があると思います。そんな魅力を体感しに来てみてください。そこで出会った人やモノが、あなたのもう一つの居場所になるかもしれません。気負わずにふらっと来て楽しんでみて! 川村結里子(かわむら・ゆりこ)株式会社結屋 代表取締役。東京都出身。2005年に三島市の「おにぎりカフェ丸平」の運営のために三島に移住。その後、一時期東京に戻るも、三島で得た人脈、経験を基に再移住、2011年に株式会社結屋を立ち上げ「三島バル」を開催。飲食関係のコンサルティングやアドバイザーなども行いつつ、コミュニケーションや場づくりのための活動に邁進。「三島LINK」や「三島100人カイギ」を開催する。2022年、会社社屋を「コワーキングカフェ 結びや」として開放、新しいコミュニケーション基地と位置づける。2024年、三島でコミュニティリーダーズサミット(CLS)開催、新たなコミュニケーションづくりを目指す。 コワーキングカフェ結びや〒411-0858静岡県 三島市中央町4-19(JR三島駅から徒歩15分)駐車場:なし※利用については055-955-7750へ連絡し、相談を。 Post Share Pin it つくっているのはウイスキーだけじゃない大事なのは三島の関係人口拡大 前の記事 水が美しい街の本当の魅力は、 そこに集う面白すぎる人たちの出会い 街すべてがサードプレイスそれが三島 次の記事