中島あきこ:あひる図書館 本でならどんな人もつながれる飲食しても本を読まなくても自由!居場所としての「あひる図書館」 2024.06.26 Post Share RSS Pin it 孤独育児に悩むママたちが、地域とのつながりをつくるために 夫の転勤で三島市に引っ越したのが2009年でした。都内で医師として勤務していた生活から、生後4ヶ月の長女を抱えてワンオペで育児をする日々。夫は忙しく深夜まで帰宅せず、家の事情で実家を頼ることもできず、引っ越して数ヶ月は、初めての育児を一人っきりでがんばっていました。友だちが欲しくてサークルの情報をいろいろ探しましたが、当時はまだネットの情報が今ほど出回っておらず、ようやく見つけた親子サークルに参加することで、ママ友だちが増えていきました。スマホもまだ全然普及していなかったし、SNSもない時代、自分と同じように情報を求めているママは多いはず。そんなママたちに情報を届けたい、つながりをつくりたいと思って、友人と2人でまず情報を載せたサイトを作ろうと、一般社団法人ママとねを立ち上げました。2人だけではできない部分は周囲にどんどん声をかけて、集まってくれた仲間が知恵を出してくれました。「サイトの存在を知らせるためにも、イベントもやったほうがいいのでは?」と意見が出て、サイトの構築と同時並行で、地域のサークルがたくさん集まるイベントを行ったんです。三島市も協力してくださって、1200人もの方に来ていただきました。これをきっかけに、仲間もさらに増えていったんです。 本を通して多世代、多様な人々がつながれる場を ところが新型コロナが感染拡大し、つながりをつくる活動をしていたのに、それが途絶える事態となりました。子育て関係のイベントもなくなり、支援センターも親子サークルも閉じてしまった。産婦人科で行っているプレパパママイベントも中止。もう全部が止まってしまったんです。でも、そういうときだからこそみんなつながりを求めているはず。そこで思いついたのが私設図書館です。密にならなくても、本だったら本を通してつながることができる。好きな本が一緒だったら、何となくつながっていられる。ママ同士だけじゃなく、年齢も属性も多種多様な人々とつながれる……。そんなことを考えていたときに、焼津で「みんなの図書館さんかく」を立ち上げた土肥潤也さんが寄稿した新聞記事を読んで、すぐに話しを聞きに行ったんです。「さんかく」は棚1つをオーナーさんが月2000円で借りて、本を入れて貸し出す形の図書館で、なんてクレイジーなやり方! とびっくりしたんですが、現地に行って施設を見て、お話を聞いたらもうワクワクが止まらないんです。でも三島にも2000円払って本を貸したい人なんているかな? と思いながらSNSで「こんな形で図書館をやったらどうだろう」と書いたら「やりたい!」という声が続々と集まったんです。縁があって、芝本町の飲食店「四季酒菜 風土」さんの2階を借りられることになり、オープンしたのが2021年です。 「ここがなかったら経験できなかった」本棚オーナーのひとこと 「ママとね」とは違う地域のつながりが生まれました。高齢男性の本棚オーナーさんの一人は「街なかではなかなか話ができないけれど、カウンターの中にいると、小さい子どもやお母さんとも話ができる。この活動をしなかったらできない経験だった。」とおっしゃっていましたし、ほかの方にも「家と仕事場以外に自分の居場所ができてすごくうれしい」とよく言われます。女性より男性のほうが、なかなか家と仕事場以外の場所を持てない方が多いようで「ここに来て地域のつながりができた」と喜ばれることも多いです。「あひる図書館」は、別に本を読まなくてもよくて、お子さん連れはもちろんOKだし、勉強したり、コーヒー飲んでボケーっとしたり、PC持ち込んで仕事していてもなんでもOK。持ち込みで飲食も可能です。好きに使っていただいていい場所です。オーナーさん同士の交流会は月に1回程度、好きな本について語るっていう形で、お酒を飲みながらになることも多いです。ここに来れば何かつながれるし、もちろん本にも出会えます! 三島は内と外の境目がない、混ざりあった社会 三島って、地元の方と移住してきた方の境目がないんです。ずっと地元にいて活動している方は強いネットワークがありますが、私のように移住してきて何か始める人も、自然にその中に混ぜてくれるという感じがありますね。人を紹介してくれて、どんどんつながりが広がっていって、支えてくれる。何度も助けていただきました。分け隔てなく一緒にいろんなことができるので、すごく動きやすいし、楽しいです。これって三島のものすごい魅力だと思っています。 【ひとこと】あひる図書館の本棚は1つ1つ、オーナーさんの個性が出ていてとてもおもしろいですよ。並んでいる本のラインナップを見て「あっ、このオーナーさんと気が合いそう」なんて出会いもあるかもしれません。カウンターにオーナーさんがいることも多いので、いろいろおしゃべりしてみてくださいね。 【三島でのお気に入りの場所・モノ・コトは?】水です。三島に越してきたとき、浄水器をつけようとしたら周囲の方が「いらないよ! 三島で浄水器つけている人なんていないよ!」と言うので、試しに水道水をそのまま飲んだらめちゃくちゃ美味しい。富士山からの清流の恵みで、飲むたびに感動するほど美味しいです。街の中に流れている川も透き通って限りなくきれいで、三島は水が美しく美味しい街だと思います。 【サードプレイス利用者へひとこと】ママ同士はもちろん、地域のあらゆる人に開かれ、つながれる「あひる図書館」。もし、なにか「ここでこんなことしたい」というアイディアがあったら、一緒にやりましょう。本棚オーナーさんも、利用者も、運営に参加する資格があるのがこの場所です。 中島あきこ(なかじま・あきこ)埼玉県出身。医師・医学博士。一般社団法人「ママとね」代表理事。夫の転勤に伴い、2009年に生後4ヶ月の長女を抱えて三島移住。知り合いもいない中、ワンオペで子育てする辛さを実感。その後、同じような思いをしているママたちをサポートしたい、と2014年に子育て情報サイト「ママとね」を立ち上げ、情報提供と、ママたちの交流を目的としたイベントやワークショップ、フリーペーパーの発行などを行う。2021年、コロナ禍で途切れてしまった人と人のつながりをつなぎ直すため、本を通してすべての人がつながる私設図書館「あひる図書館」を開設する。 あひる図書館〒411-0857静岡県三島市芝本町9-12四季酒菜風土2階(JR三島駅から徒歩8分)駐車場:なし開館日・休館日はホームページのカレンダーを確認 Post Share Pin it 「他楽(ほからく)」の精神で、三島に貢献できるホテル事業を展開したい 前の記事 野菜から見える三島のすごさ、 食べて体験してつながって知ってもらいたい 次の記事