岡本雅世:三島野菜・株式会社tane 野菜から見える三島のすごさ、 食べて体験してつながって知ってもらいたい 2024.06.26 Post Share RSS Pin it “はじかれ野菜”から広がった 野菜と生産者さんと消費者をつなぐ試み 箱根西麓から三島市にかけて広がっている標高50メートル以上の丘陵地帯があって、そこで作られている野菜を「箱根西麓三島野菜」といいます。……といっても、私自身、今の活動をする前はよく知らなかったんですけどね。 その存在をはっきり意識したのは2021年の春。仕事で市役所、JAさんから紹介された前島弘和さんの畑に行きました。前島さんは複数の若手農家で「のうみんず」というグループを作っている方です。そこで、出荷できずに廃棄される予定の山積みほうれん草を見てしまい……。さまざまな理由で流通から外れてしまう“はじかれ野菜”なんですが、立派な野菜なんですよね。あまりの衝撃に何かできないだろうか?! と考えて、前島さんに提案しました。「はじかれ野菜、ください。その代わり、農家の皆さんの写真を撮ります。農園のPRもします。交換しませんか?」 タダでもらったり、格安で買うのは違うと思ったんです。はじかれ野菜だって、生産者さんが精魂込めて作ったものですから。以前から前島さんも「野菜を買う人に、値段だけではなく、作られているストーリーを見て欲しい。そうすれば必ず箱根西麓三島野菜を手にとってもらえるはずだ。でもどうやってPRしよう……」と考えていたところだったので、すぐ「おもしろいアイディアだね」とのってきてくれました。これがすべての始まりでした。 ひとつの試みから次の試みが生まれ、広がっていく 最初にやったのは「サルベジー市場」で、はみだし野菜の販売です。でも規格外のものを安売りしていると思われないように、バスケットを1000円で買っていただいて、そこに詰め放題で500円という形にしました。この試みは大好評。しかし、意外にみなさんの野菜の食べ方が単一だったりすることが分かり、いろんな食べ方を美味しく楽しく知っていただくパーティー形式のイベントを開催。料理人が登場したり、みんなで一緒に作ったりして、そこでまた輪が広がりました。 ひとつなにかすると次の課題が見えてきて、また活動が広がっていくんです。畑で人手が必要なときに行ける人が行く「teamのらざる」や、首都圏や海外から集客しての「HATAKE TOUR」や、釣り好きの生産者さんが釣ってきた魚と野菜を出張お寿司屋さんが握るイベントなど、いろいろやっています。最近では、さまざまな企業さんとコラボするイベントも増えてきてます。 生産者さんの労力に見合うよう、ちゃんと対価を生めるイベントをやりたいので、会によっては9000円とか1万5000円とかで開催するものもありますけど、ほぼいつも満員。 集まる人はみんな食いしん坊! そして参加したあとは生産者さんや畑、野菜のことに興味が広がっていきます。 美味しい野菜があれば大丈夫 私の本業はアートディレクター、フォトグラファー、デザイナーですが、サルベジーの活動が忙しくって、仕事をする時間が減ってしまいました。だけど、以前より不安は無いんです。仕事って、「食べるため」にするっていいますよね。私、美味しい野菜はいっぱい手に入るんですから。また以前は仕事ってクライアントから発注されるものでしたが、今は自分でプランニングしてイベントを立ち上げる形が主体。だから不安がないんです。 イベントをやるときはいかに上手く広報するかが大事ですが、その点はクリエイターとしての技術が活かせているので、なんだか40歳越してから人生楽しくなってきたなぁ! と思っています。 今後は食のプロデューサーとしても仕事ができないか、2023年に立ち上げた株式会社taneで模索中です。 こういう働き方ができるのも、三島の良さかなと思っています。私の場合で言えば、食べものや野菜に興味があって、一歩踏み込んでもっとよく知りたいという方が集まってきてくれて、次のつながりをみなさんが持ってきてくれる感じなんです。 【ひとこと】岡本さんと一緒に活動する「のうみんず」のリーダー、前島弘和さんからのひとこと私の農園は三島市中心部から車でわずか10分程度。広大な斜面に畑が広がり、遠くに箱根の山々が見えて青空が広い……。こんな景色があることも、なかなか知られていないと思います。そしてこの環境でできる野菜は水と地形、土、気候の恵みによって旨味が深いのです。もっと野菜をPRしたいと思っていたときに岡本さんからの提案がありました。岡本さん自身がとにかく楽しそうなので、僕らもワクワクします。それ以前に出会えなかった消費者の方とも交流できていることにも感謝しています。 【あなたにとって三島はどんな場所?】あらゆる面で程よい距離感が心地よい場所です。ほどよく田舎、ほどよく都会、東京にも近いし畑も近い。野菜の生産者と消費者の距離感も、近すぎないけど遠すぎない。人間関係もベタベタしすぎないし、でも優しい。日常と非日常の距離感も同じです。私にとってはこの距離感がとてもよくて、暮らす場所としていい感じです。 【三島でのお気に入りの場所・モノ・コトは?】まだまだ野菜を活用していろんなことができるなと思っていています。たとえば「ヤマツ葉しょうが」という素晴らしいしょうがが三島にあって、その歴史的な価値や美味しさを知ってもらいたいと、いろんな取り組みをしてきました。出荷のときに切り落としてしまう根先を使った加工品を作って、野菜自体のPRに使ったり、生産者さんと一緒に「ヤマツ葉しょうが」のブランド化に取り組んだりしています。こんなふうに、次から次へとお気に入りが出てきてしまいます! 【サードプレイス利用者へひとこと】「どんな人でも、食べる!」という言葉がずっと心にあります。ここの部分で、誰とでもつながれる。食べもののこと、野菜のこと、もうちょっと知りたい! 関わってみたい! という方、ご一緒しましょう! 畑に行く機会もありますし、美味しいものを食べたり、飲んだりしながらワイワイ語り合うこともできます。サルベジーといっしょに、なにかしたいというアイディアがある方も大歓迎。 岡本雅世(おかもと・まさよ)ディレクター、デザイナー、フォトグラファー。株式会社taneボスざる(代表取締役)。 2021年に前島農園で大量の“はじかれ野菜”と出会ったことをきっかけに、野菜と人と生産者をつなぐ活動を始める。「サルベジー市場」や野菜を使った食事会、収穫体験イベントなど各種イベントのほか、生産者や野菜、農園を撮った写真で「畑の写真展」も開催。商品開発アドバイザー、ケータリングまで幅広く食に関する活動を行っている。都内の企業やお店とのコラボも開催。2023年株式会社tane設立、食のプロデューサーとしても仕事を展開中。 Post Share Pin it 本でならどんな人もつながれる飲食しても本を読まなくても自由!居場所としての「あひる図書館」 前の記事 三島が気になったらぜひ“みらけん”へ 三島をもっと好きにさせる自信があります! 次の記事